車庫証明の所在証明に使える書類は何?

「所在証明」って何?

丸印のカードを持った笑顔の女性

車庫証明の申請書に記載する申請者住所は、個人の場合は「住民票又は印鑑登録証明書」の住所、法人の場合は「登記簿謄本(登記事項証明書)又は印鑑証明書」の住所となります。

それを前提にしたときに問題となるのが、「申請者住所」と「使用の本拠の位置」の住所が異なる場合の取扱いです。

「申請者住所」は、上記のように住民票や登記簿等に記載されている住所ですが、「使用の本拠の位置」は、実際に車を使う人や法人の拠点となる場所(住所)のことを指します。

通常は、「申請者住所」と「使用の本拠の位置」は一致します。

一般論で考えると、個人であれば住民票の住所に住んでいることが普通ですので、おのずとその住所が拠点(使用の本拠の位置)となります。法人であれば、登記簿に記載している住所で事業を営み、その法人の従業員等が車を使うと考えるならば、その住所が「使用の本拠の位置」となります。

このような一般的なケースでは、それぞれの住所が一致することになります。一致していれば、自動車保管場所証明申請書等の「申請者住所」欄と「使用の本拠の位置」欄にまったく同じ住所を記載すれば何の問題もありません。

ところが、様々な事情で一致しないこともあります。

単身赴任のケース

例えば、個人の場合は住民票をそのままにした状態で単身赴任してきた場合です。

このとき、単身赴任先の住所が実際に車を使う拠点となる場所(使用の本拠の位置)となりますので、その住所を「使用の本拠の位置」欄に記載することになります。

となると、東京から福岡へ単身赴任してきたとしたら、申請者住所は住民票の住所、つまり東京の住所となり、単身赴任先である福岡の住所(使用の本拠の位置)と一致しません。

支店や営業所で車を使うケース

法人の場合は、本社名義で契約している車を支店や営業所など別の場所で使うケース

このとき、支店の住所が実際に車を使う拠点となる場所(使用の本拠の位置)になりますので、その住所が「使用の本拠の位置」になります。

この場合も、申請者住所である「本社の住所」と使用の本拠の位置である「支店の住所」が一致しないことになります。

自営業で事務所・店舗近くの駐車場を使用するケース

自営業でも、自宅から事務所・店舗近くまたは併設の保管場所まで直線距離で2km以内であれば、申請者住所と使用の本拠の位置の住所を「自宅住所(住民票の住所)」にして申請すれば車庫証明を取ることができます。

ただ、自宅からだと距離要件(2km以内)にひかかり申請できないケースもあります。

この場合、事務所や店舗を使用の本拠の位置として申請することになりますが、申請者住所である「自宅住所(住民票の住所)」と使用の本拠の位置である「事務所・店舗の住所」が一致しないことになります。

「使用の本拠の位置」を証明できればOK

と言っても、一致しないことが問題なのではありません。

上記のとおり、いろいろな事情や車の使用環境によって「使用の本拠の位置」が申請者住所と別になることは当然あり得ることだからです。

問題となるのは、証明できるかどうか。

「申請者住所」は、住民票等で法的に証明がなされている状態ですが、「使用の本拠の位置」は、何ら証明がされていない状態となります。

つまり、「使用の本拠の位置」に記載している住所に住んでいる、または活動の実態があることが客観的に分からない状態なのです。

そこで、「使用の本拠の位置」に生活や活動の拠点があることを何らかの形で証明する必要があります

このとき証明資料として車庫証明申請書等と一緒に警察署に提出するのが「所在証明」です。

きちんと理由があって申請者住所と使用の本拠の位置が異なるのであれば、それを確認できる書類を提出してもらえれば問題ありませんよ、と言うことです。

「所在証明」というと何か大変な資料を提出しないといけないように思ってしまいますが、ご自宅にある書類や簡単に取り寄せできる書類で大丈夫ですので安心して下さい。

普通車の車庫証明取得代行

なぜ、証明しないといけないの?

そこに住んでいるのか、または活動の拠点があることを証明できなければ、車庫証明は交付されません。

なぜなら、実際に生活していない場所や活動の拠点でない場所を自由に(好き勝手に)「使用の本拠の位置」にできるとなると車庫飛ばしなどの違法行為を助長することに繋がり兼ねないためです。

そこで「きとんとここで生活していますよ」、「ここで活動していますよ」ということを証明するために「所在証明」が必要になります。

証明がなければ車庫証明が下りることはありません。車庫証明の添付が必要な自動車登録、名義変更住所変更等の手続きができませんので、何としても証明しなければいけません。

なお、必ずしも書面が必要なわけではありません。

法人に限られますが、「使用の本拠の位置」である支店・店舗等に表札や看板が掲げられていたり、オフィスビルの場合は1階エントランスにプレート等で表記されているなど、活動の実態が客観的に確認できればそれをもって認められる場合があります。
(個人の場合は表札では認められませんので必ず書面での証明が必要となります)

ただ、実際に現地を調査員が確認した上での判断になりますので、認められるかどうかは水ものです。そのため、交付まで間、不安を抱えた状態で過ごさなければいけませんし、認められなかった場合は、結局は書面を追加提出する必要が出てきます。

なお、表示(掲示)の方法については、紙に手書きで書いたものを単に貼りつけただけではダメとのことです(警察署の担当官に確認済み)。もし紙で掲示するような場合は、少なくとも印刷したものを使い、全面を透明のテープなどで覆うようにして雨風をしのげる形で掲示することが求められると思います。

また、認められなかったわけではありませんが、以前、所在証明を書面で提出せず(すぐに用意できなかったため)、会社の表札で証明しようとしましたが、後日警察署より表示が無いとの連絡を受けました。表示されているのは私の方でも確認済みでしたので、調査員の方の見落としの可能性をお伝えし、翌日再調査してもらうこととなりました。

再調査で表示の確認ができ、車庫証明は交付されましたが、表示していてもこのようなことが起こり得ます。状況によっては交付日が伸びる可能性もありますので、所在証明はできる限り書面で提出しておいた方が安心だと言えます。

では、どのようなものが「所在証明」として使える書面なのかをみていきましょう。

所在証明に使えるもの

「使用の本拠の位置」に生活や活動の実態があることが確認できるものであればいいので、絶対にこれじゃないとダメというものではありません。

自分はこれを所在証明として提出したいと思って提出したものが認められれば何ら問題ありません。

ただ、認められなかったら二度手間になってしまいますので、ここでは一般的に所在証明として使えるものをご紹介したいと思います。

所在証明に使える主な書面

所在証明に使える主な書面は次の通りです。

  • 公共料金領収書の写し
  • 消印付き郵便物の写し
  • 納税証明書
  • 登記事項証明書(商業登記簿謄本)
  • 支店・営業所が記載されているホームページ(印刷したもの)

以下でそれぞれについて詳しくみていきます。

公共料金領収書の写し

公共料金領収書の写しは、個人法人問わず、所在証明として利用することができます。

公共料金領収書としては、下記のいずれかが利用可能です。

  • 電気
  • 水道
  • ガス
  • 電話(固定電話)

これらの領収書には「使用の本拠の位置」の住所と氏名・名称が記載されている必要があります。

そこで生活していたり、営業していれば、いずれかは必ずあると思いますので、比較的簡単に用意できる書類だと思います。

しかも、第三者的観点から当該住所地での実態が証明されるので、強い証明力を得ることができます。

ちなみに福岡県では、この公共料金領収書の写しが最も確実な所在証明の書類となります。

あまり古い領収書では証明力に疑義が出てきますし、再提出となったら二度手間になりますので、できるだけ直近(最新)のものを用意するようにしましょう。
(以前、2ヶ月前の領収書を提出したら、最新のものを提出するように求められ、再提出となりました)

なお、現在では、紙の領収書は発行されず、WEBからログインして確認するケースも多くなっています。その場合は、WEB上で明細画面を印刷したものも利用することができます。
この場合、1.「契約者名」(=車庫証明の申請者氏名・名称。法人の場合、法人名が入っていれば、支店名等が含まれていてもOK)、2.「使用場所住所」(=使用の本拠の位置の住所)、3.「引き落とし・支払日」の3点が含まれる形で印刷して下さい。

これらが無い場合は、下記の書類を所在証明に利用します。

消印付き郵便物の写し

「使用の本拠の位置」に届いた郵便物(手紙やハガキ)は、そこに生活や営業の拠点(実態)があると判断できるため、有効な所在証明となり得ます。

基本的に所在証明となり得るのは、郵便局を介して配達された郵便物だけです。

つまり、「消印付き」のものに限られます。
(郵便局の窓口で出したときに貼られることがある「郵便証紙」でも問題ありません。証紙に記載されている日付が消印とみなされます)

ただ、郵便物は第三者でなくても郵送できてしまうため、証明力としては公共料金の領収書に比べて劣ってしまいます。

とは言え、第三者(郵便局)を介して当該住所地に配達されているので、郵便物に書かれた住所にその者(宛名)の生活や活動の拠点があるだろうとの判断材料になることは確かです。

よって、一般的には所在証明として使うことができます。

ただし、どうしても都道府県や管轄によって対応状況に違いがあるものでもあります。

福岡県の場合

福岡県の場合は、いくつかの警察署に確認したところ、申請法人の関係者や関連会社(身内)および車の販売会社、並びに個人・行政書士事務所から送付された郵便物は使えないとのことです。そのため、基本的には取引先や官公署など第三者が送付した郵便物を用意する必要があります。この場合、取引先など第三者が送付したことが確認できなければいけませんので、相手方の名称・住所が記載された郵便物が必要になります。
(誰から差し出されたかは一切問われないが、書留やレターパックプラスなど、相手方に手渡しする郵便物しか認めていないところもあります)

もっとも、これらは法律上の要件ではないため、関連会社や自動車販売店等からの郵便物でも認められる場合があります。実際、当事務所で代行した際に自動車販売店やグループ会社からの郵便物のコピーを提出して認められたことは多くあります。

その可否は、車庫証明の窓口担当者で違ってくるのか、それとも申請者の過去の申請内容(既に同内容で過去に申請があり所在が確認できている場合など)によって違ってくるのかは分かりませんが、どうしても取引先など第三者からの郵便物が用意できない場合は、関連会社や自動車販売店等からの郵便物を添付するのはありだと思います。ただ、認められなかった場合は再提出で出直しになりますので、ご注意下さい。

当事務所では、認められなかった場合の影響を考えて(例えば、登録日や納車日が決まっている場合に交付日が伸びてしまうことでリスケジュールを余儀なくされる影響)、できる限り確実性が担保される第三者からの郵便物をご用意いただくようご案内させていただいています。

単身赴任先の所在を証明する場合

単身赴任先での申請など個人の場合は、書留やレターパックなど手渡しの郵便物しか認められない場合もありますので注意が必要です。

なお、このケースでは「届いた」だけではなく、本人が使用の本拠の位置において手渡しで受け取った事実が重要であるため、自動車販売店や行政書士事務所から送付した郵便物でも認められることがあります。管轄によって取り扱いが異なることがありますので、事前確認は必要です。

転送郵便物の場合

管轄によって異なるかもしれませんが、転居前の住所に届いた郵便物が「使用の本拠の位置」に転送されたものは所在証明として認められていません。転送された郵便物には、転居後の住所が郵便局によって記載はされていますが、「使用の本拠の位置」に直接届いた郵便物しか認めないとのことです。

福岡県外については詳しく分かりませんが、警察署によっては「できれば公共料金の領収書で」というところもありますので、出直しにならないよう事前に申請先の警察署に確認することをおすすめします。

なお、OSS(自動車保有関係手続のワンストップサービス)の取り組みもあり、現在はコピーでもOKとされています。

消印付き郵便物もあまり古いものだと本当に実態があるのかどうか疑いをもたれるので、比較的新しいものを用意するようにして下さい。

また、消印の年月日が不明瞭なものは認められない場合もありますので、二度手間にならないよう年月日が鮮明なものを提出するようにしましょう。

納税証明書

法人の場合は、「使用の本拠の位置」に記載の支店における法人市民税等の納税証明書も所在証明として利用することができます。

新規に開設した支店の場合、納税証明書は出てきませんので別の証明方法を検討する必要があるでしょう。

車庫証明の申請前に支店が所在する市役所等で取得します。

登記事項証明書(商業登記簿謄本)

法人の場合は、「使用の本拠の位置」に記載の支店が登記されていれば「登記事項証明書」を所在証明として利用することができます。

法務局の窓口で取得、またはネットで郵送取得します。

支店・営業所が記載されているホームページ

法人の場合は、「使用の本拠の位置」である支店、または営業所が記載されているホームページを印刷したものを所在証明として使える場合があります。

こちらについても都道府県や管轄によって取扱いが異なりますので、事前に確認していた方がよいでしょう。

なお、証明として使える場合は、支店または営業所の基本情報(名称・住所等)が一覧ページや個別ページなどにより、ホームページ内(同一ドメイン内)に記載されていることが必要です。(「使用の本拠の位置」を証明しないといけないので当然ではあります)

また、ホームページを印刷したもので対応している場合でも自社(本社等)のホームページ(公式サイト)でOKとする警察署、第三者のホームページにその支店・営業所が記載されたものでないとだめな警察署がありますので、ご注意下さい。この点、ホームページが使えるか警察署に問合せした際に一緒に確認して下さい。

福岡県は、「使用の本拠の位置」である支店、または営業所が記載されていれば、基本的に自社(申請者)のホームページ(公式サイトのみ)でOKとなっています。車庫証明申請時に使用の本拠の位置となる支店・営業所が記載されているホームページの写しを提出することがありますが、問題なく受理・交付されています。(ただし、一部の警察署ではホームページの写しを認めていないところもあります)

まずは「公共料金領収書の写し」

いくつか所在証明として使えるものを見てきましたが、まずは「公共料金領収書の写し」が用意できないか検討することをおすすめします。

公共料金の領収書に「使用の本拠の位置」の住所と氏名・名称が記載されていれば、きちんと受付けてもらえますので、最も確実な所在証明の方法になります。

公共料金領収書がどうしても用意できないときに初めて、その他の所在証明を検討するとよいでしょう。

「申請者住所(住民票・印鑑証明の住所)」と「使用の本拠の位置(実際に住んでいるところ・活動しているところ)」が異なるときは、所在証明を付けなければ車庫証明がおりませんので、確実に用意するようにして下さい。