なぜ、車庫証明の申請に「自認書」や「保管場所使用承諾証明書」が必要なの?

車庫証明の申請で必須の書類

自認書と保管場所使用承諾証明書

車庫証明を申請する際にはいろいろな書類が必要となりますが、必ず必要となる書類の一つが「自認書」または「保管場所使用承諾証明書」(書き方はこちら)です。

この2つの書面をまとめて「保管場所使用権原疎明書面」と言い、車庫証明の申請者(車の使用者)が「保管場所を使用する権原があることを証明(疎明)」するための書類になります。「疎明」とは、「一応確からしい」ことを示した状態のことであり、証明よりも緩やかな証明のことを指します。

使用権原疎明書面の提出が無ければ、警察署では権原がないものとして扱われ、申請を受付けてもらえません。

そのため、車庫証明を取るためには、保管場所の所有形態によって「自認書」または「保管場所使用承諾証明書」のどちらか一つを必ず提出しなければならないことになっています。

車庫証明以前に保管場所(駐車場・車庫)の使用権原がなければ、申請する保管場所に勝手に車は停められないことは当然ですし、使用権原があるのかどうかが客観的に分からなければ警察署としても「まあ、いいか」で処理することはできません。使用権原が不明な状態では、トラブルや違法駐車を招いてしまいますからね。

そこで、車庫証明の申請では、申請者に保管場所の使用権原があることを客観的に確認できる書類として「自認書」または「保管場所使用承諾証明書」の提出が必須になっているわけです。

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車庫法の規定からみる使用権原の疎明

保管場所の確保について、「自動車の保管場所の確保等に関する法律(通称:車庫法)」で次のように規定されています。

車庫法 第三条

第三条 自動車の保有者は、道路上の場所以外の場所において、当該自動車の保管場所(自動車の使用の本拠の位置との間の距離その他の事項について政令で定める要件を備えるものに限る。第十一条第一項を除き、以下同じ。)を確保しなければならない。

自動車の保管場所の確保等に関する法律 第三条

車の保有者は保管場所を確保することが義務であるとともに、カッコ書きで「政令で定める要件を備えるものに限る」として要件を満たさなければ、保管場所として認められないことが規定されています。

政令で定める要件が、次の「自動車の保管場所の確保等に関する法律施行令」第一条の規定です。

車庫法施行令 第一条

第一条 自動車の保管場所の確保等に関する法律(以下「法」という。)第三条の政令で定める要件は、次の各号のすべてに該当することとする。
一 当該自動車の使用の本拠の位置との間の距離が、二キロメートル(法第十三条第二項の運送事業用自動車である自動車にあつては、国土交通大臣が運送事業(同条第一項の自動車運送事業又は第二種貨物利用運送事業をいう。)に関し土地の利用状況等を勘案して定める地域に当該自動車の使用の本拠の位置が在るときは、当該地域につき国土交通大臣が定める距離)を超えないものであること。
二 当該自動車が法令の規定により通行することができないこととされる道路以外の道路から当該自動車を支障なく出入させ、かつ、その全体を収容することができるものであること。
三 当該自動車の保有者が当該自動車の保管場所として使用する権原を有するものであること。

自動車の保管場所の確保等に関する法律施行令 第三条

第三号で「保管場所として使用する権原を有するものであること」が要件とされており、使用権原がなければ(疎明できなければ)車庫証明が下りないことを意味しています。

ちなみに、第一号、第二号については、車庫証明の申請の際に一緒に提出する「保管場所の所在図・配置図」に記載する内容(所在図の距離記載・配置図の出入や保管場所のサイズ記載)の根拠となっています。まずは記載内容で要件を満たしているかを確認しますが、警察署の現地調査によっても要件の該当性が確認されることになります。配置図に記載したサイズよりも実際のサイズが小さく、車が保管場所に収まらない場合は申請が通らないこともあり得ることになります。

少し横道にそれてしまいましたが、次の「自動車の保管場所の確保等に関する法律施行規則」に疎明の方法について規定されています。

車庫法施行規則 第一条第2項第三項

「保管場所として使用する権原を有するものであること」の疎明方法が、次の施行規則第一条第2項第一号規定です。

第一条
2 前項の申請を行う場合において、申請書二通のうち一通(同項の規定による別段の定めにより申請書一通を提出することとされる場合にあっては、当該申請書)には、次に掲げる書面を添付しなければならない。
一 自動車の保有者が当該申請に係る場所を保管場所として使用する権原を有することを疎明する書面

自動車の保管場所の確保等に関する法律施行規則 第一条

第一条第2項は、「車庫証明の申請を行う場合(前項の申請を行う場合)は、次に掲げる書面を添付しなければならない」としています。

そして、第一号にはその書面として「自動車の保有者が当該申請に係る場所を保管場所として使用する権原を有することを疎明する書面」の添付が必要であることが規定されています。

この「疎明する書面」が「保管場所使用権原疎明書面」、つまり「自認書」または「保管場所使用承諾証明書」です。

これらの書面を添付しなければ、要件が満たされず、他の書類が揃っていても車庫証明の申請を受け付けてもらえません。

当然ですが書面とありますので、申請者本人が「駐車場の所有者から承諾してもらいました」と口頭で伝えても、使用権原があることを疎明したことにはなりません。どのようにでも言えてしまいますからね。

そこで、その事実が明確に示された書面を提出することで、申請者に使用権原があることを、警察署において客観的資料から確認できることになるわけです。

「保管場所使用承諾証明書」は早めに手配しましょう

以上のように、「所有者の承諾のもと保管場所が確保されているかを疎明」するために、「自認書」または「保管場所使用承諾証明書」を添付することが求められています。

非常に重要な書類ですので間違いのないよう確実に用意することが大切です。

特に「保管場所使用承諾証明書」は大家さんや管理会社、あるいは親族(親など)にお願いすることになるため、自分の意思で進められる自認書に比べてやり取りや郵送に時間を要するケースが多いです。

そのため、登録の日程が決まっているなど急いでいるときは、一番最初に手配しておいた方がよいかと思います。

また、自宅の車庫を保管場所にする場合でも、親と同居していて親名義の土地建物であれば、名義人(所有者)である親に「保管場所使用承諾証明書」を書いてもらう必要があります。

自分が住んでいる家だから「自認書」だと勘違いしてしまうケースがしばしばありますので、ご注意下さい。

自認書が必要になるケース

自認書は、保管場所(土地建物)が自己所有の場合に必要となります。

自己所有とは、保管場所が車庫証明申請者「本人名義」のものだということです。

つまり、車の使用者(申請者)が自分名義の土地建物を車の保管場所として使う場合に必要なのが「自認書」。

自認書に自分で記入して、保管場所の土地建物が自己所有であることについて間違いないことを疎明します。

上でも少し書きましたが、意外と勘違いしやすいのが、「自分が住んでいる家(一戸建て)の車庫に停めるから自認書でしょ?」といったケースです。

あくまで保管場所が自分名義か否かで判断しますので、自分の名義であれば「自認書」を用意し、そうでなければ「保管場所使用承諾証明書」を用意しなければいけないことになります。

例えば、申請者(車の使用者)が両親と一戸建てに同居していて、一戸建ての名義人が父親であれば、父親に保管場所使用承諾証明書を書いてもらいます。つまり、父親に保管場所として使うことを承諾してもらい、それを書面にする。これが保管場所使用承諾証明書です。

私(父)の土地建物を「申請者(子)の車の保管場所として使用することを承諾した」ということを書面で証明することになります。

住んでいるところを保管場所に使うから自認書なのではなく、住んでいようがいまいが自分名義(自己所有)の土地建物を保管場所として使う場合は自認書。このように覚えておくとよいでしょう。

自分名義の一戸建ての車庫はもとより、別のところにある自分名義の土地を保管場所とするのであれば「自認書」ということになります。

保管場所使用承諾証明書が必要になるケース

保管場所使用承諾証明書は、自己所有でない、他人所有の土地建物を保管場所として使う場合に必要になる書類です。

通常は、住んでいる賃貸アパートやマンションの駐車場を使う場合、あるいは月極駐車場を借りる場合などが保管場所使用承諾証明書が必要になるケースだと思います。

他人の土地建物を使うわけですから、何らかの証明が無ければ、警察署の方で申請者にその土地建物を使用する権原があるのかどうかを知ることはできません。

そこで所有者に使用することを承諾してもらい、それを書面にした「保管場所使用承諾証明書」の出番です。これにより申請者に保管場所を使う権原があることを警察署においても確認できることになります。

保管場所使用承諾証明書は、所有者に書いてもらう必要があります。

賃貸アパートやマンションであれば、大家さんや管理会社に依頼して発行してもらいます。分譲マンションの場合は管理組合等に承諾証明書の発行をお願いすることになると思います。

もちろん、上でお話ししたように親の所有であれば、親に書いてもらうことになります。

自己所有の一戸建てでなければ、多くがこのケースに当てはまるのではないでしょうか。

時間がかかる場合がありますので、できれば早めに連絡して準備しておくことをおすすめします。