車庫法からひも解く「車庫証明」の必要性

車庫証明の必要性

一部、車庫証明が必要ない地域もありますが、登録自動車(普通車等)に乗っている多くの人は、一度は車庫証明(正式には自動車保管場所証明書)を取ったことがあるのではないでしょうか。

取得の仕方は、自分で取るケース、代行を使って取るケースなどありますが、どのような方法にしても車を所有または使用している、したことがある人の多くが車庫証明を取っているはずです。

とは言え、意外と身近だけど、あまり関心を持たれないのが車庫証明の宿命だったりもします。

今回は、少しでも関心を持っていただけるよう「車庫証明の必要性」について考えてみたいと思います。

「自動車の保管場所の確保等に関する法律」を見れば必要性が分かる

車庫証明の申請書作成自体は特に難しいものではありません。ただ、警察署に2回も行く必要があるし、申請から交付までに数日がかかります。このように地味に面倒な手続きの代表格が車庫証明でもあります。

「こんな面倒なことやりたくない!」と言っても、それが通用しないのが車庫証明です。

その理由については、「自動車の保管場所の確保等に関する法律」(通称:車庫法)の第一条・第三条・第四条からひも解くことができます。

その前に、ここで言う車庫証明は登録自動車の車庫証明のことを指します。登録自動車は、一般の方にとっては「普通自動車や小型乗用車」(※)のことと思っていただければ問題ありません。
(※)小型乗用車は、車の大きさが全長4.7m以下、全幅1.7m以下、全高2.0m以下、かつ総排気量が660cc超2000cc以内の自動車。普通自動車は、いわゆる普通車で小型乗用車の基準を一つでも上回れば普通自動車になります。

軽自動車も一般的には車庫証明と表現されますが、実際には「届出」になります。そのため、「申請」手続きである普通車等の車庫証明とは取り扱いが異なります。軽自動車については、軽自動車も車庫証明が必要?でも解説していますので参考にして下さい。

それでは、車庫証明がなぜ必要なのか、法律の条文からひも解いていくことにしましょう。分かりやすくするため、一部但し書きは割愛しています。

車庫証明で国民の安全を守る!

車社会である現代において、車の使用者が自由に車を駐車できるとなると様々な問題が生じてしまいます。

例えば、道路を駐車場として使用してよい、または自由にどこにでも保管してよいとなればどのようなことが起こるでしょうか?

駐車している車によって道幅が狭くなって、人や他の車の通行の妨げになってしまいます。
それによって渋滞を招いたり事故を誘発する恐れがありますし、実際に駐車してない場合に比べて事故が起こる可能性は高まるでしょう。それに救急車や消防車などの緊急車両が通行できずに立ち往生したら人命にも関わってきます。

7000万台以上の車があふれる日本では、このような危険を除去し、安全な道路を保つためにしっかりと車の状況を管理しておく必要があります。

その方法の一つが保管場所、いわゆる車庫や駐車場の確保です。

これらの危険を防ぐことを目的として示しているのが車庫法の第一条です。

(目的)
第一条 この法律は、自動車の保有者等に自動車の保管場所を確保し、道路を自動車の保管場所として使用しないよう義務づけるとともに、自動車の駐車に関する規制を強化することにより、道路使用の適正化、道路における危険の防止及び道路交通の円滑化を図ることを目的とする。

自動車の保管場所の確保等に関する法律 第一条

「自動車の保有者等に自動車の保管場所を確保し、道路を自動車の保管場所として使用しないよう義務づける」ことで「道路における危険の防止及び道路交通の円滑化を図る」こととしています。

つまり、車を持っている人に、その車を停める駐車場や車庫を確保してもらうことで、無秩序な駐車による危険を未然に防止し、広く我々国民の安全を守ることを掲げています。

第一条の目的を実現するために自動車の保有者に保管場所を確保することを義務付けているのが、次の第三条です。

車庫(保管場所)を確保することは車を持っている人の義務

(保管場所の確保)
第三条 自動車の保有者は、道路上の場所以外の場所において、当該自動車の保管場所を確保しなければならない。

自動車の保管場所の確保等に関する法律 第三条

まず、「道路上の場所以外の場所において」として、交通の妨げになったり、危険が及ばないところを保管場所にしなければいけないことを明示しています。なお、道路上の場所を自動車の保管場所として使用した場合は、3ヶ月以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられます。

そして、「保管場所を確保しなければならない」として、駐車場や車庫を確保することが義務付けられています。

この義務がきちんとなされていることを証明するものが「車庫証明書」です。

必要性の観点から言えば、適法に保管場所を確保していることを公に証明してもらうために「車庫証明」が必要だと言えます。

そして、手続き面(実質面)で車庫証明が必要となるのが、次の第四条です。

車の登録手続きで車庫証明が必要

(保管場所の確保を証する書面の提出等)
第四条 道路運送車両法第四条に規定する処分、同法第十二条に規定する処分(使用の本拠の位置の変更に係るものに限る。以下同じ。)又は同法第十三条に規定する処分(使用の本拠の位置の変更を伴う場合に限る。以下同じ。)を受けようとする者は、当該行政庁に対して、警察署長の交付する道路上の場所以外の場所に当該自動車の保管場所を確保していることを証する書面で政令で定めるものを提出しなければならない。

自動車の保管場所の確保等に関する法律 第四条

第一条と第三条は大義を実現するための必要性だとすると、第四条はそれを確実なものにするための必要性だと言えます。

ただ、私たちは普段そのようなことを意識することはありません。

車を使用する人、持っている人の心情としては、
車の登録手続きで「車庫証明が必要だから」
というのがもっともなところだと思います。第四条には、それが規定してあります。

土台としては国民の安全を守るために車の保有者等に車庫の確保が義務付け、それを証明するものが車庫証明でありますが、私たちがもっとも関心があるのは、まさに「手続き上の必要性」だと思います。

では、第四条の中身をみてみましょう。

条文中の「道路運送車両法第四条」は、新車を購入したときに行う「(新車)新規登録」、または一時抹消登録中のナンバーが無い自動車を新たに使用するときに行う「(中古車)新規登録」のことです。

「同法第十二条」は「変更登録」についての規定で、その中で住所変更に関する登録のことです。引っ越しなどで車検証上の住所が変わる場合が該当します。

「同法第十三条」は「移転登録」についての規定で、いわゆる名義変更のことです。使用の本拠の位置に変更が無い場合、つまり車検証上の住所と新所有者の住所が同じ場合(例:同居している親子間の名義変更)は申請時に車庫証明は必要ありません。逆に、他人間の売買や譲渡の多くはカッコ書きの「使用の本拠の位置の変更を伴う場合に限る。」に該当することになります。

そして「警察署長の交付する道路上の場所以外の場所に当該自動車の保管場所を確保していることを証する書面」が車庫証明のことです。

「提出しなければならない」とあるので、
「新規登録」
「住所変更」
「名義変更(使用の本拠の位置に変更がある場合)」

の手続きをするには、車庫証明を提出しなければならない。提出しなければ、手続きを進めることができないことになります。

したがって、車庫証明は「車を登録する際(上記ケース)の添付書類として必要である」ということが分かっていただけたかと思います。

車庫証明で安全を守っている!

車庫証明の意義としては、保管場所が確保され、その証明力を得ることで、最終的には私たちの安全が守られることにあります。

その実効性を確実なものとするため、「車を買ったり、もらったりして名義を変更するとき」、あるいは「引っ越しなどで住所を変更するとき」の登録申請手続きの際の書類として添付が義務付けられています。

添付しなければ手続きを進めることがでないので、確実に車庫証明を取る必要があります。

それにより、保管場所の確保義務が担保され、巡っては私たちの安全が守られることに繋がるわけです。

正直、車庫証明を取るのは(時間的に)面倒くさい手続きです。

ただ、車庫証明を取ることによって「人の安全を守っているんだ」と思えば、心が晴れやかになるのではないでしょうか。

普段目立たない存在である車庫証明ですが、そこにはいろいろな意味が込められ、また必要性があることをこの機会に知っていただければ幸いです。